大相続時代(!)を生き抜く3つの方法

相続法改正

わが国の65歳以上の高齢人口が3500万人を超え、折しも2019年の1月から2020年の4月にかけて改正相続法の施行時期が波のように押し寄せ、まさに「大航海時代」ならぬ「大相続時代」を迎えようとしています。これを知っておくと知らないとでは大きな違いが生じます。

改正相続法の施行を目前にして、今こそ大相続時代を生き抜き、自分の財産を安心して相続人に承継させる方法をおさらいしましょう!!

1 自筆証書遺言を今以上に活用しよう!

自分の財産は、生きているうちは自分が自由に処分できますが、もし亡くなったら、自分の財産を処分することはできません。にもかかわらず、生きているうちに、自分の財産の処分方法をあらかじめ決めておく方法が遺言です。

遺言には大きく分けて、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。これまで、相続人間の紛争を予防するために遺言書を書くなら、公証役場で公証人の前で作成する公正証書遺言がおススメだと言われてきました。なぜなら、一度公正証書遺言を作成しておけば、その原本は公証役場に保管されますから、遺言の紛失や偽造を心配する必要がないからです。

他方で、公正証書遺言は作成するにはハードルが高いとも言われてきました。まず、公証役場で作成する以上、タダでは作ることができず、実際に相続させる遺産の多寡によりますが、一般に10万円から15万円は掛かります。さらに、遺言の原案を弁護士や司法書士などの専門家に依頼すれば、その作成費用が上乗せされることになります。

これに対し、自筆証書遺言は、遺言者が自分ですべて自書しなければなりません。日付や遺言者の署名押印が欠ければ、それだけで遺言全体はとなります。若い方ならともかく、高齢の方が、遺言の対象となる銀行預金の銀行名・支店名・口座番号や土地の地番、建物番号などを正確に一言一句漏らさずに書くのは至難の業でしょう。

そこで、今回の相続法改正では、まず自筆証書遺言の方式の緩和が提案されました。すなわち、今まではすべて自書しなければならなかったところ、銀行預金の銀行名・支店名・口座番号や土地の地番・建物番号などは、ワープロ打ちしたものをプリントアウトした紙片を自筆証書遺言とホチキス止めして一体のものとすれば、自筆証書遺言として有効と認められることになりました。さらに、土地や不動産の登記簿謄本をホチキス止めすることも認められています。ただ、加除訂正のやり方には独特のルールがあります。

以上の自筆証書遺言の方式緩和は、2019年1月13日から施行されますから、注意が必要です。

また、法律の施行は2019年7月10日になりますが、自筆証書遺言を法務局に保管する制度も始まります。これまで自筆証書遺言は、遺言者の死亡後、家庭裁判所で検認という手続が必要とされていましたが、法務局に保管された自筆証書遺言は、この検認が不要となる点で、公正証書遺言と同様の扱いがされることになります。

このように、改正相続法では、自筆証書遺言が現行の制度よりも使い勝手の良いものになります。

2 配偶者居住権を活用しよう!

次に配偶者居住権という制度が新たに創設されましたので、説明します。

家族形態の多様化に伴い、再婚相手に連れ子がいることも稀ではなくなりましたが、例えば、夫が自分の死後当面の間は妻に居住建物に住まわせたいが、妻の死亡後は、建物を自分の連れ子に相続させたいと思うことがあります。ところが、妻と自分の連れ子が養子縁組をしていなければ、妻の死後、その遺産は妻の親族(例えば妻の兄弟)が相続することになります。他方で、建物のような不動産は価値が高いので、遺産分割によって建物を取得した妻は、その分、預貯金のような流動資産を相続する分が減少し、老後の生活資金に窮することがあります。

そこで今般の改正で創設されたのが、配偶者居住権という制度です。まず、配偶者居住権は、建物の所有権ではないので、その価値は所有権より低額になります。そこで、遺産分割により配偶者居住権を取得した配偶者は、建物所有権を取得した場合よりも多くの流動資産を相続する可能性が出てきます。また、建物所有者である夫が、存続期間を終身とする配偶者居住権を妻に相続させ、建物所有権を自分の連れ子に相続させる遺言を作成すれば、妻が生存中は居住建物に居住することができ、妻の死亡後は、もともと建物所有権を相続した夫の連れ子が建物を自由に使うことが可能となります。

このように、配偶者居住権が創設されたことで、関係者の希望に沿った、より柔軟な相続が実現することになるといえます。

3 遺留分に注意しよう!

最後に、遺留分についても改正がされました。遺留分とは、遺言によっても侵害することができない相続人の最低限度の取り分のことをいい、一般に法定相続分の2分の1がこれに当たります。現行法では、遺言で遺留分を侵害された者は、遺留分減殺請求権を行使すると、相続財産に属する不動産などが、遺留分の割合で、遺言で取得した者と共有関係になるという効果が生じました。しかし、相続財産に属する不動産が相続人の間で共有になると権利関係が複雑になりますので、そもそも遺留分を侵害する遺言が敬遠されることに繋がります。

これに対して改正法は、遺留分を侵害された者は、侵害者に対して侵害額の金銭による支払いを請求するという制度にしました。これにより、間接的に遺言の活用が促進されると言われています。

4 終わりに

このように、新しい相続の制度は使い勝手がよいものになっています。詳しく知りたい方は、ぜひメールでご連絡ください。

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